ずっとキミしか見えてない
 と、私が軽く落胆しかけた、その時だった。


「おはよ」


 撫でるように、軽く頭をポンと叩かれたと同時に、頭上から落ち着いた大好きな声が聞こえてきた。


「こ、光雅くん。おはよう」


 会えないかなあと切望していたタイミングでの彼の登場に、驚きながらも嬉しさがこみ上げてくる。

 光雅くんは、いつも通り控えめな微笑みを浮かべていた。思いっきり笑わないところが、クールで本当にかっこいいと思う。

 
「なんか、元気無さそうに歩いているように見えたけど。大丈夫?」


 私の横に立って歩調を合わせながら、光雅くんが顔を覗き込んできた。

 あなたのことをいろいろ考えていて、勝手にがっかりしていただけだよ。

 ――なんて、もちろん言えないから、私は適当に誤魔化すことを決意した。


「だ、大丈夫! 昨日夜更かししちゃって、ちょっと眠かっただけだよ」

「ふーん。そう? ならいいけどさ」


 そう言いながら、顔をさらに近づけてくる光雅くん。ちょっと、そんな至近距離で見ないでほしい。

 今日の顔ちゃんとしてるかなあ。眉毛の形とか、きれいにできてたっけ?
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