ずっとキミしか見えてない
 なんてことに不安になっていると。


「わっ」


 急に、強い風が吹いてきて髪の毛がバサバサと流された。

 目にゴミが入りそうになり、慌てて腕で目元を抑える。

 風はすぐに収まったけれど、光雅くんも食らったらしく、顔をしかめながら乱れてしまった髪の毛を手で直していた。


「急な強風だったな」

「うん。そういえば、今日は風が強い一日ですって朝の天気予報で言っていたかも」


 服についたホコリを手で払いながら、家を出る間際に見た朝の情報番組の予報を思い出す私。


「そうなんだ、知らなかった。――あ、紗良」

「え?」


 またまた光雅くんが、私の顔を覗き込んできた。

 なんでそう簡単に、私に接近してこられるのだろう。

 私なんて近づくだけでドキドキしちゃって、安易に近寄ることができないというのに。

 私が固まっていると、光雅くんは手を伸ばして、なんと頭を優しく触ってきた。


「髪の毛、さっきの風のせいですごく乱れてるよ」


 くすりと笑いながら、髪の毛を撫でつけるように触ってくる。
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