ずっとキミしか見えてない

 芽衣との会話も見られていたのか。

 うまい言い訳が見つからなくて、私は言葉に詰まってしまった。


「紗良ちゃん、もしかして光雅と喧嘩でもしてんの?」

 「そんなんじゃないけど……」


 喧嘩というわけではない。

 私が一方的に、彼から離れようと拒絶をしているだけだ。

 だけどその理由が私にとっては惨めなものだから、良悟くんに言う気にはなれなかった。

 すると良悟くんは「あーあ」と、とても残念そうに間延びした声を上げて天井を眺めた。


「なんだ、喧嘩じゃないの。がっかり」


 良悟くんの言葉がまったく想像もしていなかった内容で、私は目を丸くする。


「がっかり……? それ、どういう意味?」


 私が光雅くんと喧嘩をすることで、良悟くんにとって何かいいことでもあるのだろうか? 

 少し考えてみたけど、全く思い当たらない。


「別にー。こっちの話でーす。今のは忘れてちょーだい」

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