ずっとキミしか見えてない
 心臓の鼓動が早くなっていくのを感じる。

 八年前から恋焦がれていた相手だけれど、成長した姿を見てますます恋が深まっていく。

 その後、一番後ろの席だということもあってか、先生に気づかれないような小声で、私と光雅くんは改めてお互いの自己紹介をした。

 彼は、中学までは違う県に住んでいて、中学卒業後の春休みにこの辺に引っ越してきたばかりらしい。

 だからあまりここら辺のことが分からないんだよね、と言った。

「それなら、私生まれた時からずっとこの辺だから……。何かわからないことがあったら聞いてよ。安くておいしいお店とか、高校生向け遊び場とか、結構知ってるから」

「そうなんだ、それは助かるな。じゃあ、困ったら結城さんに聞くことにするね」


 困ったら私を頼ってくれる――。

 社交辞令かもしれないけど、ずっと捜していた人にそんなことを言われてしまうと、ますます心臓が落ち着かなくなった。


「あ、ところでさ。結城さんの鞄に付けてる黒猫のキーホルダー、俺たちが子供の頃に流行ったお菓子のおまけだよね」

「え⁉ う、うん」


 光雅くんが、机の横にかけていた私の通学鞄をチラ見して言った。

 慌てながらも、やっとのことで私は頷く。

 内心、とても焦ってしまった。
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