ずっとキミしか見えてない
「えええええ⁉ な、なんで⁉ えーと、その!」


 頭の中で彼の言葉を組み立てた瞬間、驚愕のあまり私は大きな声を上げてしまっていた。

 教室の中で、それも担任の先生が高校生としての今後の生活についてを、熱心に説明している最中ということも忘れて。


「え、紗良と光雅くん何⁉ 何の話してんの⁉ 彼氏って⁉」

「まだ高校初日だよー。展開早くね? やるう」


 光雅くんの言葉は、前の席の芽衣と良悟くんにも聞こえていたらしくて、からかうように私たちを囃し立てる。

 私はどきまぎしてしまって、顔を熱くさせながら呆然として光雅くんを見ていた。

 しかし彼は至って落ち着いていて、少し小首をかしげて私の返答を待っているようだった。

 ――すると。


「ちょっとそこの四人。何を話しているのかな?」


 騒がしい私たちにさすがに気づいたようで、担任の先生が鋭い眼光を飛ばしてきた。

 私は身をすくめて「すみません」と小さく言ったが、度胸の座っている芽衣は罰悪げに笑って、頭を下げた。

 良悟くんも、へらっと笑って「すんません」なんて軽い口調で言っている。

 光雅くんにいたっては、先生の小言はどこ吹く風で、いまだに私の方をじっと見ている。

 まあ、確かに彼は大きな声はあげていない。騒ぎの元凶ではあるけれど。

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