ずっとキミしか見えてない
「ほんとに、紗良って一途だよ。かわいいんだから、その気になれば彼氏なんてすぐにできるのにさー」

「純情でいいと思うけどなあ。まあ、俺も今の彼女と長いけどね!」

「何それ良悟くん、ノロケ? ってかやっぱり中学の時の彼女と続いてたんだねー」


 芽衣と良悟くんのふたりがわいわい話すのを聞きながら、私は黙々と不要な本を段ボールに入れていく。

 段ボールを挟んで私と向かい合わせになっている光雅くんも、無言で本を詰めていた。

 すると芽衣と良悟くんに向かって司書の先生が、「これゴミ捨て場に持って行ってくれるかな?」と、中身がいっぱい詰まった3つのごみ袋を指してそうお願いした。

 ふたりは「はーい」声を揃えて了承すると、ゴミ袋を持って書庫から出て行ってしまった。

 司書の先生も外に用事があったのか、ふたりの後に続くように退室した。

 書庫の中は、私と光雅くんのふたりきりになってしまったのだった。

 予想もしていなかった、突然の密室でふたりきりの時間に、私は落ち着かない気持ちになってしまった。

 ドキドキしながらも、本の整理を続けて何とか心を鎮めようとする。
< 24 / 228 >

この作品をシェア

pagetop