ずっとキミしか見えてない
 しょんぼりしてしまった私に、芽衣が苦笑を浮かべてフォローする。

 そう、私は芽衣の言う通り、八年という遠い昔に一度会っただけの男の子に、ずっと恋をし続けている。

 本当に、会ったのはたった一度だけ。

 八年前の夜に、家族でねこ座流星群を見に行った公園で出会っただけの男の子。

 それ以来彼には会えていない。相手は私のことを覚えてすらいないかもしれない。

 だけど私は、彼を忘れられなかった。どうしても忘れることができなかった。

 星が落ちてくるあの晩に触れた、彼の優しさが。

 それに私たちは、あの日約束をしたんだ。

 ねこ座流星群は、八年に一度の周期で大出現をする。

 それを知っていたその時の彼に、こう言われた。

 ――八年後。

 この公園で、また一緒に星を見よう。

 私はその約束をずっと大切にしていた。

 あの時に彼からもらった、お菓子のおまけの猫のキーホルダーは、高校の通学鞄に付けられて今も揺れている。

 もうだいぶ古くなってきているけれど、時々洗ったり、色が剥げてしまったところは塗装し直したりして、宝物の用に肌身離さず持っていた。

 でももう、八年も前のことだ。

 そんな子供の頃の約束、芽衣の言う通り彼は覚えていないだろうなあ。

 そんなことを、芽衣の隣で考えながらふたりで昇降口に向かおうとした――その時だった。
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