ずっとキミしか見えてない
 あの時、一緒に星を見た男の子だよね?

 彼にそう尋ねようと思って口を開きかけた。――だけど。

 こんな昔のこと、彼は覚えているのだろうか?

 もし忘れてしまっているとしたら、初対面なのに、変なことを言う子だと思われてしまうかも。

 そう思ってしまった私は口をつぐみ、彼をじっと見つめるだけで何も言えずにいた。

 すると彼は、そんな私に視線を返すと、少しだけ目を開いた。

 驚いているような顔にも見えた。

 そして、私と視線を重ねながら、こう言った。


「あれ、君は」


 ――え?

 君は、何?

 彼の言葉の続きが気になった私だったけれど、「月島(つきしま )―!」と呼ぶ声が聞こえた。

 声のした方を見ると、この高校の先生らしき人がこちらに手を振っている。

 眼前の彼が「はーい」と返事をした。

 どうやら、月島くんというらしい。

 八年という歳月を経て、初めて知った彼の苗字だった。


「ごめん、俺先生に呼ばれてるから。またね」


 彼はそう言うと、私が何かを言う前に先生の方へと駆け寄っていってしまった。

 彼――月島くんは、さっき何を言いかけたのだろう。

 まさか八年前の出来事を、私のことを覚えていて、そのことを言おうとしたとか?


「ねえ、紗良。今の人超かっこよくない? 月島くんだってー。新入生かな?」
< 8 / 228 >

この作品をシェア

pagetop