ずっとキミしか見えてない
 淡い希望を抱いていた私に向かって、芽衣が少し興奮した様子で言った。

 確かに彼は、かっこよく成長していた。

 八年前会った時もかわいい顔をしていた記憶はあるけれど、背は小さかった覚えがある。

 それが私より遥かに身長が高くなっていて、頼もしい雰囲気をまとうようになっていた。

 彼の成長ぶりに、私たちの間に八年という長い歳月が流れていることを感じさせられた。

 ――あなたは私のことを、覚えているの?

 「あれ、君は」の後に何を言おうとしたの?

 そんなことを悶々と考えながら、私は芽衣と共に入学式の会場である体育館へと向かったのだった。





「本日は、私たち新入生のためにこのように盛大な入学式を催して頂き、まことにありがとうございます。校長先生をはじめ、諸先生方ならびに来賓の皆様にも、心より御礼申し上げます。入学式へと向かう道すがら、桜の花や春の花々を見つける度に……」


 壇上には「星の王子様」こと、さっき私を野球の硬球から救ってくれた彼――月島光雅( こうが)くんがいて、新入生代表の挨拶を落ち着いた声で淡々と述べていた。


「ねえ、紗良知ってる?」


 在校生や教職員、来賓の方々も大勢いる中で、堂々と話す光雅くんに見とれていた私に、隣に座っていた芽衣がひそひそ声で話しかけてきた。

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