ずっとキミしか見えてない
 そしてどこか意味ありげに、かっこよく微笑む。

 心臓が今までにないくらいに、一段と大きく動いた。


「秘密だよ」


 囁くような彼の言い方は、子供っぽい感じは全くなくて。

 きっと、彼のような言動を色っぽいというのだろう。

 たまらず、頬が熱くなっていくのを感じた。

 ーー何をお願いしたんだろう。

 言い方がとっても意味深だったけれど……。

 さっきお医者さんになるのが夢って話をしていたから、やっぱりそういう感じのことを願ったのかな?


「紗良ー! いつまで遊んでるのっ。ほら、もう帰るわよー!」


 ママが少し苛立ったような声を上げながら、近寄ってきた。

 どうやらタイムリミットのようだ。


「ごめん! 私帰らなきゃ!」

「そっか。俺もそろそろ家族のとこ戻るよ」

「うん、またね! また遊ぼうね!」

「うん、じゃあな」


 とても簡単な別れの挨拶だった。

 友情の証を交換して、八年後に再会するという大切な約束をしたとは、思えないほどに。
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