3月生まれの恋人〜Birthday present〜
侑月
土曜、正午過ぎ。
腕時計の針に目を落とした丁度その時
彼女は、開いた自動ドアから飛び込むように、店へと入ってきた
『ごっ、ごめんゆづ!
遅くなって!』
向かい合わせの席にどかりと腰を下ろした莉奈は
あがった息を整えながら、申し訳なさげにそう言った。
『こっちこそ急に呼び出したりしてごめんね』
『や、全っ然いいんだけどさ・・・』
莉奈は、羽織っていた深緑色のコートを脱ぎ、脇に置くと
しゃんと姿勢を正してあたしに向き直った
『なにかあったの?』
心配そうな瞳をあたしに向け、そう訊いてくる
小・中・高の十二年、お互いにずっと一番の友人だった莉奈
大学で東京に出たあたしと、地元福岡の国立大へ進学した莉奈とは、四年間、離れた時期もあったけど
あたしたちはずっと、何でも相談しあえる親友だった。