3月生まれの恋人〜Birthday present〜
そう、あれは・・・
遡ること約半月、2月のバレンタインデー
勢いに任せて彼女、侑月を求めたあの日の俺
目を潤ませて見上げる侑月の顔を思い出す
“どーすりゃいーんだっつーの”
俺は、手元にあった日本酒のグラスを一気にあおると
ドンと音を立ててそれを置いた。
そんな100%挙動不審な俺を、ぽかんと見つめていた先輩が
はっと、我を取り戻して俺を見据える
『おま、まさか、あのクリスマスの彼女か?』
口振りに少々驚きの色を滲ませた先輩が、
わなわなと俺を指差しながらそう訊いてくる
『や!別にゆづの事だとかそんな事じゃ』
『嘘付け!さっきから挙動不審すぎんだよ、オマエ』
俺と先輩は、お互いに落ち着きなくそう言い合うと
目を見合わせて、ため息を落とした
『何よ、一体何がどーなってそんな悩んでる訳?
お前らしくねーな』
屋台の内側に置かれていたボロい丸椅子に、どかりと腰を下ろした先輩が
ポケットからクシャクシャのタバコを取り出して、火をつけた
『ほら』
一本だけ残っていたタバコを投げてよこされ
俺は無意識にそれを手に取った
差し出されたライターで火を貰う。
『何?初めてだって言われて手ェ出せないでいるわけ?』