3月生まれの恋人〜Birthday present〜
開いた携帯のディスプレイには、着信も、メールも、無い。


『何かあったのかな?』



リダイヤル表示から柊の番号を選び出し、かけてみるものの、電話の向こうから聞こえてくるのは無機質なアナウンス



・・・電波が届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません・・・



もしかして、帰り道事故にでも?
閉じた携帯を握りしめたあたしはもう一度時計を見上げた


もしかしたら…
不意に全く違う心配が心を支配する



…もしかしたら、私が嫌になった?…とか?



もしかしたら明日の約束を思い出し、柊はあたしを重たく感じたのではないだろうか?

考えてみれば、23にもなるのに…初めて…だなんて
退かれて当然かも


明らかにモテそうな容姿と性格を併せ持つ柊

あたしじゃあ、柊にはつりあわないのかもしれない

負の感情ばかりが次々沸き上がり、気がつくと携帯を握りしめた手の甲にパタパタと涙が落ちる



『柊…』



昨日まで、ここで笑いかけてくれた柊

今日だっていつもみたいにやって来て、美味しい美味しいって
あたしに沢山笑顔をくれるって思ってた


止まらない涙と嗚咽に身を縮める



〜♪ピンポ〜ン♪〜



どれくらいの時間が経ったのだろうか

玄関にようやく来客を告げるチャイムが鳴った
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