3月生まれの恋人〜Birthday present〜
一度も止まらず走り続けて、ようやくたどり着いた俺たちのアパート

見上げるゆづの部屋には、あたりまえだけど淡い光が灯る

完全に上がった息をととのえながらゆづを思う

毎日俺の分まで用意してくれてる温かい夕飯、きっと今日だってそうしてくれてたと思う



『怒ってるよ、なぁ…』


連絡しなかったのも、こんなに遅くなったのも、初めて



『ごめん、ゆづ…』



俺は覚悟を決めると、とぼとぼとエレベーターへと乗り込んだ


もう二度とゆづの手料理食わしてもらえねーかも


日頃プラス思考の俺ですら、さすがに不安に思ってしまう
扉の前に立つも申し訳なさで心が痛い

重いため息を吐きながら、弁解の言葉を考えつつ、ボタンを押した



〜♪ピンポ〜ン♪〜



呼び出しのチャイムが鳴り、自然身を固くする俺に、程なく小さな足音が聞こえた



『ゆづ?俺…』




< 24 / 38 >

この作品をシェア

pagetop