翡翠の御石
半日近く ――

頑張って、探したものの。
翡翠石は見つからなかった。

陽も暮れ始め ――
供の者が、
「そろそろ、戻りましょう」
などと真顔で言い出したので。

姫は、
「見つかるのに」
「ホントは、すぐ、見つかるのに」
と、悔しさのあまり、旅商人を前にして、泣いてしまった。

ブワッと溢れた涙の滝が、塩辛く頬を滴り落ちる。

本当に、すぐ見つかるのに。
湿った鼻をズズズビッと啜る。
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