極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 きっと彼も私と同じように、最後に自分の気持ちを伝えて、この恋に終わりを告げようとしているのかもしれない。

 それがわかると、村瀬さんが次に言う言葉がわかって泣きたくなる。

「だけど、俺と一緒になったら、さくらちゃんにつらい思いをさせるだけなんだ。……母さんがそうだった。周りの反対を押し切って父さんと結婚したことで、陰で何度も泣いているところを見た。……どんなに俺がキミを守っても、泣かせてしまうことがあると思う。それなのに、好きだからずっとそばにいてほしいなんて言えない」

 村瀬さんのお母さんは、たくさんつらい思いをしてきたんだね。

 それを一番近くで見ていた村瀬さんだからこそ、私のことを思って言ってくれているのだろう。

 だけど私と一緒になれないのは、それだけが理由ではないはず。早乙女さんとの婚約の話をしないのは、村瀬さんの優しさだろうか。

 だったら、あんまりだ。振るならハッキリと嘘をつかずにすべて話してほしかった。だって同じ会社で働いているんだもの、いずれ私は彼と早乙女さんの婚約を知ることになるのに……。
 もらったバラの花束を持つ手の力が強まる。
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