極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
『それにしてもやっぱり私、この商店街の人たち好きだわ。大学を卒業してから一度も来ていなかったのに、私のことをみんな覚えてくれていて声をかけてくれたの! コロッケやお菓子とか、いっぱいもらっちゃったよ。さくらの引っ越し先も教えてくれたし』

 なるほど、それで教えてもいないのに私のアパートにたどり着けたわけだ。

『もう帰っているんだよね? あとどれくらいで着く?』

「あと三分で着くよ」

 進むスピードを速め、みんなと挨拶を交わしながら商店街を突き進んでいく。

『本当? よかったー。じゃあ待ってるね』

「えっ! あ、ちょっと光美!?」

 自分の言いたいことだけ言って切られた通話。足を止め茫然となる。

 もう、光美ってば。人の話を聞かないところも本当に変わらない。今夜はどうするのか、大には知らせたのか、いろいろと聞きたかったのに。

 通話の切れたスマホをバッグにしまい、自宅へと急いだ。

 少しすると見えてきたアパート。その前には、大きなスーツケースを手にした人物がひとり佇んでいる。

「光美!」

 名前を呼びながら近づいていくと、私の声に気づいた彼女はスーツケースを置き去りにして、真っ直ぐこちらに駆け寄ってきた。

「さくらー! 久しぶり!!」

 両手を広げて勢いそのままに抱き着いてきた光美に、身体がよろめいてしまう。おまけにギューッとしがみついてきたものだから余計に。
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