極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「ちょ、ちょっと光美! 苦しいから」

「だって会うのは一年ぶりだよ!? もう嬉しくて」

 そう言うと勢いよく離れたと思ったら、チークキスをされた。

「わっ!? て、光美!?」

 慣れないチークキスに、同性ながらドキっとしてしまう。

 咄嗟に頬を手で抑えると、光美は「ごめん、つい」と言いながら可愛く舌を出した。

「同僚には、ヨーロッパ出身の人も多くて日常的にしていたから」

 それを聞いて納得したけれど、日本生まれの日本育ちの私には慣れない行為だ。

 まだバクバクいっている心臓を鎮めながら、放置されたままのスーツケースが目に入った。

「もしかして空港から直接きたの?」

「うん、もちろん! 今夜は自分へのご褒美に、高級ホテルを予約したんだ。ゆっくりのんびり過ごして、実家には明日帰るつもり」

「そっか」

 光美はスーツケースを取って戻ってくると、私の手を掴んだ。

「さて、積もる話もあるしなにか食べに行こうか」

「えっ!?」

 私の予定を聞かずに、そんな……。でも強引なところが光美らしい。

 それに予定などないし、久しぶりにゆっくり光美と話がしたい。なによりすごくいいタイミングで帰ってきてくれた。

 相談してみよう、村瀬さんとのことを。光美に話を聞いてもらえたら、答えが出るかもしれない。

 そんなことを考えていると、グイグイと私の手を引きながら光美は悪い顔をしてほくそ笑む。
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