極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 そんな大を見て光美は「本当にウブすぎ」なんて言っていたけれど、大は光美にされたから顔を真っ赤にさせたわけで。私が同じ行為をしたら絶対に嫌悪感を露わにするはず。

 あからさまに好きって気持ちが態度に出ているのに、昔から一向に伝わらない。それが今もなのか……と思うと、光美とともに笑っていられないほど不憫になった。

 光美の笑いも収まった頃、おじさんに店番を代わってもらった大と三人でやって来たのは、商店街の一角にある居酒屋。

 二十歳を超えてから毎週のように通っていた、思い出の場所だ。

「いやー光美ちゃん、本当に久しぶりだね。これ、サービスの角煮」

「いいんですか? ありがとうございます!」

 久しぶりに来店した光美に上機嫌の店長は、角煮をテーブルに置いて鼻歌を口ずさみながら戻っていく。

「なんだよ、俺なんて今も毎日のように来てやってるって言うのに、サービスされたことないけど?」

 不服な大は厨房にいる店長に聞こえるよう、刺々しい声で言う。するとすぐに言葉が返ってきた。

「アホ! さくらちゃんを泣かせたお前にサービスなんかするか!」

「またその話かよ!」
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