極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 大が私を泣かしたという噂は、瞬く間に商店街中に広まってしまい、大はいまだに顔を合わせればみんなから、こうして責め立てられているとか。

 おまけに噂には尾ひれがつき、かく言う私も『大を振ったんだって? それがいい!』『女を泣かす男ではダメだ』なんて言われてしまっている。

「なんだ、大。まさかお前……さくらちゃんに振られたからって、今度は光美ちゃんを狙っているのか? とんだ変わり身の早さだな!」

「そ、そんなわけないだろ!? そもそもさくらとも、なにもないから!」

 光美に関しては事実のため、ムキになる大に店長をはじめ、客のみんなにも「男を上げたな、大」「それでこそ一人前の男だ」なんて言って、からかわれる始末。

 昔となんら変わらない光景に苦笑いしながらビールを飲む私の横で、光美は我関せず状態。サービスでもらった角煮を私にも勧めてきた。

「んー、おいしい! さくらも食べなよ」

 まぁ、大は商店街のみんなにとって息子のような存在。これが彼の定位置だと結論づけて、私も角煮に箸を伸ばした。

「相変わらずおいしい。トロトロなのが最高だよね」

「うんうん。昔から変わっていない味で安心する」

 騒がしい店内で角煮に舌鼓を打つ。そして残り僅かになった頃、光美は思い出したように聞いてきた。
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