極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「大、もうここでいいよ。明日も朝、早いんでしょ? ごめんね、送ってもらっちゃって」

 足を止めると大も足を止め、自然と向かい合う。

「いいって。同じ商店街で近いし、さくらも一応女だからな。なにかあったら大変だし」

「一言余計!」

 すぐさま彼の胸元にグーパンチすれば、また大は笑う。

 だけど私の背後にあるアパートのほうを見た瞬間、大の顔が凍りついた。

「どうしたの?」

 声をかけながら振り返ると、こちらに向かってくる人物を視界に捕らえる。

「えっ……村瀬さん?」

 真っ直ぐ私たちのもとへ歩み寄ってきた村瀬さんに、目が丸くなる。

 どうして村瀬さんが?

 驚きと困惑から、頭の中が真っ白になってしまう。

 彼は私と大の目の前で足を止めると、怒りを含んだ目を大に向けた後、私を見て眉尻を下げた。

「会って返事がしたいってメッセージを見て、居ても立っても居られず飛んできた。……もしかして、隣の彼と一緒にいるってことが答えなのかな?」

 えっ、隣の彼って……。

 大を見れば私同様、頭の中が真っ白になっていたのか、放心状態。だけど再び村瀬さんに目を向けられると、早口で捲し立てた。
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