極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「ありがとうございます。……それでは俺はこれで! 失礼します」

 村瀬さんに向かってもう一度頭を下げると、最後に私の肩を叩き、大は背を向けて足早に去っていく。

「あっ……ありがとう、大! 気をつけてね」

 声をかけると、大は手を挙げた。少しずつ小さくなっていく大の背中。それを見つめていると、いつの間にか隣に立っていた村瀬さんが口を開いた。

「本当にごめん、急に来て勘違いをして」

「あっ、いいえ、そんな! ……むしろ私のほうこそすみません。いきなりあんなメッセージを送ってしまって……」

 だけどあのメッセージを見て、こうして駆けつけてくれたんだよね? そう思うと嬉しくて、胸がいっぱいになる。

「いや、連絡をくれて嬉しかったよ。……だけど、おかげで嫌というほど思い知らされた」

「――え? あっ」

 次の瞬間、腕を引かれ抱き寄せられた身体。一瞬にして村瀬さんのぬくもりに包まれた。

「む、村瀬さん……?」

 抱きしめられている。そう、理解するとたまらなく恥ずかしくなり、彼を呼ぶ声も上擦ってしまう。

 すると村瀬さんは、私を抱きしめる腕の力を強めた。

「ごめん、どうしようもないほどキミが好きなんだ」

 苦しげに放たれた言葉が、私の胸の奥深くに響いていく。
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