極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 箸を手にしたまま彼の反応を待っていると、味噌汁を一口飲んだ村瀬さんは顔を綻ばせた。

「ん、おいしい」

 その一言にホッと胸を撫で下ろす。次に彼は厚焼き玉子を頬張ると、満面の笑みを見せた。

「やっぱりさくらが作る卵焼きが、世界で一番おいしい」

「……っ! そ、それはよかったです」

 昨夜から『さくら』と呼び捨てされているけれど、いまだに慣れないし、眩しい笑顔で『世界で一番おいしい』なんて言われたら、まともに顔を見られなくなる。

 おかずに目を向けて、私もパクパクと口に運んでいく。

 その後も村瀬さんは何度も私が作った料理を褒めてくれて、ご飯はおかわりし、きれいに完食してくれた。

「ごちそうさまでした」

 そう言うと空いた食器をまとめて持ち、席を立つ村瀬さん。

「あ、片づけは……」

 すぐに私も立ち上がったものの、彼に止められてしまった。

「おいしい朝食をごちそうになったんだ。片づけも手伝わせて。それにさくらだって今日は仕事だろ? ふたりでやったほうが早い」

 そう言われては反論の余地はない。それに私もあと少ししたら、準備をして家を出ないといけない時間。ここは甘えてしまおう。
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