極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 それは素直に顔に出ていたのか、村瀬さんは私を安心させるように言う。

「大丈夫、さくらのことを話したら子供みたいに大喜びすると思うから。……前に話しただろ? 父さんは家柄とか関係なく、母さんの人となりに惚れこんで求婚したんだ。恋愛結婚だったんだよ、それも大の付く、ね。母さんは苦労もしたと思うけど、その苦労も泣いて乗り越えられるほど父さんのことが好きだから結婚したんだと、今ならわかるよ」

 水道の蛇口を止め、タオルで手を拭きながら彼は続ける。

「そんなふたりが反対するわけないだろ? 大丈夫、絶対に俺たちのことを応援してくれるよ」

「村瀬さん……」

 不思議。彼にそう言われると自然と緊張も解け、安心できる。

「それより不安なのは俺のほう。……おふたりには身分を明かしていなかったし、反対されないか心配だよ」

 深いため息とともに出た弱音。

 それこそ心配することない。お父さんもお母さんも、村瀬さんのこと気に入っていたし、家柄で判断するような両親ではないもの。

 それを伝えたけれど、村瀬さんの不安は拭えず。そしてあまりに彼がオロオロするものだから、つい笑ってしまう。

 その後、すぐに「笑うことないだろ?」と言われ、苦しいほどギューッと抱きしめられてしまった。
< 149 / 308 >

この作品をシェア

pagetop