極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 弥生さんに写真を見せてもらった時は目を疑った。すぐには信じることができなかった。
 村瀬さんがうちの会社の副社長だなんて――。

 やっと信じることができたのは、毎月配信されている社内報で彼の特集記事を見た時だった。

 淡い恋心を抱き、いつかこの想いが村瀬さんに届けば……と密かに願っていた。

 でも社内報で副社長としてインタビューに答える彼を見て、私の願いは一生叶うことはないと思い知らされたんだ。

 釣り合うわけがない。むしろ、相手にされないと思う。村瀬さんの隣に私が立つ未来はない。

 それでも一度芽生えた恋心は簡単に消せなくて、日に日に大きくなるばかりだった。

 これ以上好きになったって、失恋決定しているのだから最後に自分が傷つくだけ。そうわかっていても、気持ちを止めることはできなかった。

 会えただけでこんなに嬉しくて、胸がいっぱいになる。そんな人に出会えたのは初めてだから。

 すっかり開き直り、村瀬さんが私のことを弁当屋の看板娘だと思い、自分の会社で働いている社員だと知らないことをいいことに片想いを継続中。

 報われなくてもいい。今はただ、こうして会えるだけで幸せな気持ちで満たされる自分の想いを大切にしたいんだ。
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