極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 お父さんの実家は栃木県の、のどかな場所にある。徒歩で行けるところに綺麗な川があって、子供の頃はよくそこでおじいちゃんと釣りを楽しんだ。

 近くには大学があり、学生寮も完備されていることから、そこの学生さんがよくうちのお店を訪れていた。

 もちろん地域の人にも人気のお店で、帰省中に手伝った時、おじいちゃんとおばあちゃんが生き生きと働いていたことを、今でも鮮明に覚えている。

 お客さんもみんないい人ばかりで、まとまった休みにしか帰らない私のことも覚えてくれて、会うたびに気さくに声をかけてくれた。

 高速道路を降りてから、しばらく田畑が広がる道を走っていると集落が見えてきた。

 おじいちゃんの家は集落の中腹にある。垣根を超えた先には、広い庭と昔ながらの木造建築の大きな平屋。そこがおじいちゃんの家だ。
 車から降りると、村瀬さんは興味深そうに平屋を見上げた。

「素敵なところだね。お宅も歴史を感じる」

「ありがとうございます。えっと……どうぞ、こっちです」

 着くまではそれほどだったのに、いざおじいちゃんの家に着くと、私まで緊張してきた。

 これまで元彼を両親に紹介したことはなかったし、なにより相手はさんざんからかわれてきた村瀬さんだ。照れくさいものがある。
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