極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「今はまだまだ未熟で勉強の毎日ですが、将来は父から会社を引き継ぐつもりです」

「そうですか……」

 ポツリと呟くとお父さんはジッと名刺を眺めた後、真剣な面持ちで村瀬さんを見つめた。

「さくらから、村瀬さんと結婚すると聞きました。本日はその挨拶に来てくれたと。私たちも村瀬さんの人柄は知っていますし、素直に娘との結婚を喜んでいました。……しかし、こんな大企業の後継者となると話は違います」

 驚かれるとは予想していても、まさか反対されるとは夢にも思わなかったから耳を疑う。

「お恥ずかしい話、うちはごく普通の家庭です。そこで育ったさくらが、村瀬さんのような立派な家に嫁いで幸せになれるのか……」

「お父さん……」

 反対しているのは、私のため。それが伝わってきて目が潤んでしまい、慌てて目元を拭う。

 泣いている場合じゃない。自分の気持ちをしっかり伝えないと。だけどそれより先に、村瀬さんが口を開いた。

「おっしゃることはごもっともです。現に僕の母が一般家庭の出身で、とても苦労していましたから。……父に隠れてひとり、泣いていることもありました」

 村瀬さんの話を聞き、お父さんとお母さんは複雑な表情で顔を見合わせた。
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