極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「初めまして。村瀬誠司と申します」

 自己紹介する村瀬さんは、どこか怯えているよう。
 優しいおじいちゃんだけれど、初対面の人には大抵怖がられる。それというのも顔がちょっぴり怖いから。村瀬さんの目にも、そのように映っているのかもしれない。

「誠司君、さくらと近くの川で魚を釣ってきてくれんか?」

「え……魚、ですか?」

 急なお願いにポカンとなる村瀬さん。

「よろしく頼むよ」

 お父さんたちに「父さん、なに言ってるんだよ」「村瀬さん、行かなくていいですからね」と言われる中、おじいちゃんは私にだけそっと耳打ちして、自分の部屋へ戻っていった。



「俺、おじいさんに嫌われたようだ」

 あれからおじいちゃんの言いつけ通り、釣り道具を持って村瀬さんとともに向かう先は、近くの河原。

 その道中、あまりの落ち込みっぷりを見せる村瀬さんに頬が緩んでしまう。

「大丈夫ですよ、おじいちゃんは村瀬さんを嫌ってなどいませんから」

「いや、そんなことはないだろ。俺、気に入らないから追い出されたんじゃないのか?」

 だけど村瀬さんは信じてくれなくて、そんな疑惑を抱く。
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