極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「両親に言ってくれたこと、嬉しかったです。……ありがとうございました」

 村瀬さんの気持ちがヒシヒシと伝わってきて、泣いてしまったほど嬉しかった。

「それは俺のセリフ。……それと弁当もありがとう」

 村瀬さんは、意地悪な顔で弁当ネタを蒸し返してきた。

「もう、それは忘れてください」

「悪いけど一生忘れられないよ。それほど嬉しかったから」

 そう言うと立ち上がり、大きな手が差し伸べられた。

「たくさん魚を釣って帰らないとな」

「そうですね」

 笑顔で彼の手を掴むと、一気に身体を引き上げられた。そのまま強く握られた手。

「さくら、釣りはしたことあるの?」

「はい、子供の頃は帰省するたびにおじいちゃんとやってました。村瀬さんは?」

「子供の頃、父さんと数回だけ。だから教えてくれる?」

「もちろんです」

 笑い合いながら新緑が揺れる陽だまりの中、歩を進めていく。

 たとえこの先、どんなにつらいことがあっても、今日のことを思い出せばなんだって乗り越えられそう。そう思えてならなかった。

 それからふたりで楽しく釣りをして大自然の中、穏やかな時間を過ごした。
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