極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
変化と揺れる想い
 目覚まし時計の音で目を覚ますより先に、寝苦しさで目が覚めた。

「暑い……」

 起き上がるとすでに太陽は昇っていて、部屋の中はモアッとしている。季節は初夏。今年も本格的な夏が始まろうとしていた。

 いつもの時間に出勤し、控室でギンガムチェックのコックシャツとベージュのチノパンに着替える。黒のミドルエプロンを付けて、最後に背中まである髪をうしろでひとつにまとめた。

「今日も頑張ろう」

 ブラウンのハンチング帽を被ってロッカーのカギを閉め、気合い十分に控室を後にした。



 村瀬さんと栃木を訪れてから、早いもので一ヵ月以上経つ。彼との交際は順調。時間が合えば仕事終わりに会って食事に行き、仕事が忙しくない時は泊まりに来てくれている。

 約束通り、あれから殿山さんのお店にも行った。『やっぱりくっ付いたな』なんて言われて、からかわれてしまったけれど、殿山さんが作る料理はやはりおいしくて、また行きたいと思っている。

 週末は私の家で過ごすようになった。金曜日の夜から日曜日まで一緒に過ごす時間は、まるで夢のように幸せ。

 何気ない時間を過ごしながら、距離を縮めている。

 幼少期のことや趣味や特技、好きな食べ物に嫌いな食べ物etc……。些細なことを知るたびに、不思議と好きって気持ちが膨れていた。
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