極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「昔から厚焼き玉子は、さくらのほうがうまいんですよ」

「ちょ、ちょっとお父さん?」

 上機嫌で私の背中をバシバシ叩くお父さんに、殺意が芽生える。

 なんてことを言ってくれちゃっているの? 本気でやめてほしいんだけど。

 だけどそんな私の願いも虚しく、お母さんも乗っかってきた。

「そういえばさっき仕込みをしていたら、賞味期限が近い卵があったわね。さくら、いつも贔屓にしてもらっている村瀬さんに作ってきて」

「お母さんまでなに言って……!」

「ほら、早く早く」

「そんな、お気遣いなく」と止める村瀬さんを無視して、お母さんは私の背中をグイグイ押す。

 あっという間に厨房に追いやられ茫然としていると、お母さんは素早く冷蔵庫の中から卵を取り出した。

「はい、卵」

 ふと貼られている賞味期限のシールを見ると、まだ全然余裕がある。

「どういうこと? 急にこんなことして。村瀬さんも困っていたじゃない」

 聞こえないよう小声で抗議をしても、お母さんは悪びれた様子を見せない。

「さくら、これはチャンスよ」

 興奮気味に言うお母さんに圧倒され、一歩後退る。するとすかさず私との距離を縮めた。
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