極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 そして仕事に行く彼を見送り、帰ってきた彼を出迎える日々が訪れてほしい。そのためにも、強い人間になりたい。村瀬さんのご両親に認めてもらえるような、素敵な女性になりたい。

「ご両親にお会いするまでに、自分を磨いておきますね! だから村瀬さんもお仕事、頑張ってきてください。……私も仕事、頑張ります」

 単純な考えだけれど、大好きな仕事を頑張ることで自分に自信が持てる気がするから。

 その思いで伝えると、村瀬さんは力いっぱい私を抱きしめた。

「好きだよ、さくら。……キミのことが好きでたまらない」

 苦しいほど抱きしめられて愛の言葉を囁かれたら、心臓は壊れそうなほど速く動く。

 それに気づいた村瀬さんはクスリと笑った。

「一度離れようか。でないと、さくらの心臓が壊れそうだ」

「……はい、そうしてください」

 降参するようにそう言うと、村瀬さんはまた笑って私の身体をゆっくり離した。だけど次に彼の手が私の頬に触れたものだから、またドキッとしてしまう。

 村瀬さんにこうして見つめられると、目を逸らせなくなる。そして私を見る目は甘くて優しくて……。言葉にしなくても見つめられるだけで「好きだ」と言われているよう。
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