極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 それから村瀬さんが日本を発つまでの間、会えたのはたった一度だけだった。

 出発前の忙しい時間の合間を縫って食事を楽しんだ後、彼は私を送り届けて再び仕事に戻っていった。

 その後は一度も会える機会はなく、【行ってくる】とメッセージを残してシンガポールへ行ってしまった。

 以前の中国出張同様、弥生さんをはじめ、社内の女性社員からは落胆の声が溢れた。

 三ヵ月も村瀬さんの姿を拝めないなんて、会社に来ている意味がないとぼやく人もいるほど。
 改めて村瀬さんの人気ぶりを痛感すると同時に、そんな人が私の恋人だということが信じられない。会社にいると身を以て思い知る。

 きっと弁当屋に買いに来てくれなかったら、私と村瀬さんが出会うことはなかったのかもしれない。

 そう思うと、彼との出会いは運命だったのかも……なんて、ロマンチックなことを考えてしまう。

 村瀬さんが日本を発って約二週間。家を出る前に届いた彼からのメッセージ。

【おはよう。今日も仕事、頑張って】

 最近の日課になりつつある、お互いを励ますメッセージに頬が緩む。私もすぐに【おはようございます。村瀬さんも一日、頑張ってください】と返信し、家を後にした。
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