極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 今夜は久しぶりに光美と大、三人で飲みに行く約束をしている。きっとふたり……とくに光美に、村瀬さんとのことを根掘り葉掘り聞かれるんだろうな。

 それがちょっぴり憂鬱になりながらも、意気揚々と最寄り駅へと向かった。



「それじゃさくらちゃん、お先に」

「お疲れ様でした」

 弥生さんたちが上がった後も、私はいつものようにひとり事務作業を続けていた。

 発注は終えたし、来月のメニューも考えた。うん、今日も定時で上がれそう。

 残りの雑務を片づけて一度食堂に立ち寄り、戸締りを確認していく。それが終わる頃、ちょうど終業時間を迎えた。

 鍵を施錠して控室に戻り、着替えを済ませてからスマホを確認すると、光美からメッセージが届いていた。

【今から向かうよー。さくら、今夜は電話では聞けなかったアレやコレ、包み隠さず話してもらうからね】

「やだな、ちょっと怖い」

 彼女のメッセージを見て笑ってしまう。

 包み隠さずって言うけれど、光美には電話でたくさん話したつもりなんだけどな。

【わかったよ。覚悟して行きます】と返信してバッグにスマホをしまい、控室のドアを開けた瞬間、廊下の先にいた人物を見て足が止まる。

 壁に寄りかかっていたのは早乙女さんだった。ドアの音で私に気づき、ゆっくりと近づいてくる。
< 180 / 308 >

この作品をシェア

pagetop