極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「秘書の山浦のガードが厳しくて、なかなかキミに接触する機会がなかったが、やっと今日その機会ができた」

 一呼吸置き、専務は冷ややかな声で言った。

「回りくどいことは嫌いな性質でね、単刀直入に言おう。誠司君とは別れてくれ」

 予想はしていたことだけれど、実際に言われると胸が痛む。それはつまり、私では彼に不釣り合いだと言われているのだから。

「キミと私たちでは、住む世界が違うんだ。結婚も一種のビジネスだ。その中で結婚相手と愛を育めばいい。……私はね、兄さんのような苦労を誠司君にさせたくないんだよ」

 そう、だよね。村瀬さんがお母さんがひとり、泣いていた姿を見てきたように、社長が苦労されているところを専務は一番近くで見てきたはず。

 きっと早乙女さんとの結婚を勧めたのも、私を呼び出して『別れてくれ』と言ったのも、すべて村瀬さんのため。

 くしゃくしゃになった封筒を机に置き、専務はゆっくりと椅子に腰かけた。

「なにより私は、この会社をもっと大きくさせたい。そのためにも誠司君には、早乙女君と結婚してもらうのが最善の策なんだ。……大丈夫、キミにもいつか見合う男性との出会いがあるさ。誠司君とでは、あまりに不釣り合いすぎる。……わかってくれるね?」

 有無を言わさぬ物言いに、思わず返事をしてしまいそうになる。
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