極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています

　だけど専務に言われたことは、村瀬さんが副社長だと知ってから、嫌というほど思い知ったこと。それでも私は彼とともに歩む未来を選んだんだ。

　なにも言わない私に理解したと思ったのか、専務は硬い表情を崩した。

「話は以上だ。うまくキミのほうから誠司君に別れを切り出してくれ」

　もう用はないと言わんばかりに、専務は仕事に取りかかる。

　ううん、話はまだ終わっていない。私は村瀬さんに別れを切り出すつもりなどないから。

「どうぞお帰りください」

「申し訳ありませんが、私は彼と別れるつもりは微塵もございません」

　早乙女さんがドアを開けようとした時、声を張り上げた。

　私の声に専務は仕事をする手を止めて顔を上げると、みるみるうちに表情を険しくさせていく。

「どういうことだね？」

　怒りを含んだ声で言われ、息を呑む。だけどすぐに自分を奮い立たせた。

「私が村瀬さんに不釣り合いなことは、百も承知です。それは村瀬さんも同じです。……それでも私たちは、たくさん悩んで一緒に生きる未来を選びました」

　もしかしたら、私以上に村瀬さんのほうが悩んだかもしれない。それでも彼は、私を選んでくれた。