極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 その瞬間、力が抜けて身体がふらついてしまう。

 緊張した。……震えるほど怖かった。

 どうにか足に力を入れて、おぼつかない足取りでゆっくりとこの場を離れた瞬間、専務室からは怒鳴り声が聞こえてきた。

 その声にびっくりして、逃げるように誰も乗っていないエレベーターに乗り込む。

 ゆっくりと下がっていく中で、少しずつ緊張が解けていく。

 私がさっき専務に言い返したことで、この先どうなるかわからない。それでも言わずに後悔するより、言って後悔したほうがいい。

 少なくとも村瀬さんなら、そうするはず。「よく言ったな」って褒めてくれるよね。
 そんな場面を想像できてしまい、頬が緩む。

 ちょうどエレベーターが一階に着き降りると、定時をだいぶ過ぎた今はエントランスに人影は少ない。

 自分の足音が異様に響くのを感じながら歩を進めて玄関を抜けたところで、光美たちと約束をしていたことを思い出した。

「いけない、連絡しないと」

 足を止めて慌ててスマホを見ると、光美と大から着信とメッセージあった。

 すぐに【ごめん、今から会社を出ます】と送って、駆け足で向かった。



 待ち合わせ場所である、商店街の一角にある居酒屋に着くと、すぐにふたりからどうして遅くなったのか問われた。

 乾杯もそこそこに事の経緯を説明していると、光美は身体をワナワナと震わせ、最後まで話し終えると勢いよく立ち上がった。
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