極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「なんなの!? その専務! 村瀬さんの叔父だかなんだか知らないけど、よくもうちの可愛いさくらに、怒鳴って不釣り合いだなんて言ってくれたわね」

 今にも会社に乗り込みそうな剣幕の彼女に、私と大は必死に宥める。

「いや、専務もきっと会社と村瀬さんのためを思って言ったんだと思うの」

「それにしたって、あんまりじゃない!」

 一向に怒りが収まらない様子の光美は腰を下ろし、一気にビールを喉に流し込んだ。

「でも私も言い返しちゃったし。お互い様かなって」

「いやいや、当然の権利でしょ! むしろもっと言ってやればよかったのよ。クソ親父くらい」

 彼女の口から出た汚い言葉に、大と顔を見合わせると、つい笑ってしまう。

「時田、そのへんにしとけよ。……それに俺たちはその専務に対して怒るんじゃなくて、怯まずに自分の気持ちをはっきり伝えることができたさくらを労うのが先じゃないか?」

 そう言うと大は、私を見て白い歯を覗かせた。

「よく頑張ったな、さくら。相手は専務だろ? しかも村瀬さんの叔父だっていうのに、よく逃げずに立ち向かった」

「大……」

 幼なじみにこうして褒めてもらえると、自分の言動は間違いじゃなかったと思える。
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