極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「そうだね、さくらはよく言ったよ。昔のさくらなら、絶対言えなかったよね」

 大に続いて光美は感慨深そうに言う。

「さくらをここまで強くさせたのは村瀬さんのおかげかな? 愛の力は偉大だね」

 からかい口調で言うと、子供を褒めるように頭を撫でてくるものだから、その手を払い除けた。

「もう、子供扱いして」

「えぇー、そんなつもりはないんだけど?」

 なんて言いながら光美は悪い顔で言う。完全にからかっているでしょ。

 ムスッとしていると、大は手を二回叩いた。

「今夜は俺の奢り。思いっきり飲んで食え。……なにがあっても負けるなよ、さくら。自分が強くなれるほど好きな相手と巡り会えたんだ。そんな相手と誰もが出会えるわけじゃない」

「……うん」

 私もそう思う。これほど惹かれる相手とはこの先出会えないし、出会えたことが奇跡だよ。

「料理、なかなかこないな。ちょっと見てくる」

 そう言うと席を立ち、厨房に向かう大の背中を見つめていると、隣に座る光美はボソッと囁いた。

「やばい、胸に矢が刺さった」

「えっ?」

 耳を疑うことを言った光美を見ると、自分の胸元を両手で押さえていた。
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