極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「できた」

 パックに詰めて、急いで店頭に戻った。

「すみません、村瀬さん。お待たせしました」

 両親の生暖かい視線に居心地の悪さを感じながらも、出来たてのだし巻き卵を渡すと、村瀬さんはすぐに受け取ってくれた。
 そして満面の笑みを漏らす彼に、胸がキュンとなる。

「ありがとう、さくらちゃん」

 もうその一言だけで十分すぎる。嬉しくて泣きそうだ。

「お口に合うといいのですが……」

「合うに決まってるよ。えっと、お会計は……」

 お財布を出そうとする村瀬さんを、両親はすぐさま止めた。

「いいえ、お代はけっこうです」

「そうですよ、さくらが作ったものなんですから」

「ですが……」

 渋る村瀬さんに止める両親。私も何度も手を横に振った。

 お金を支払ってもらうなんてとんでもない。私がただ、村瀬さんに食べてもらいたいだけなのだから。

 三人で必死に説得をすると、どうにか村瀬さんは納得してくれた様子。

「ありがとうございます。ではお言葉に甘えていただきます」

「どうぞ召し上がってください」

 両親とともにホッと肩を落とした時、村瀬さんは耳を疑うことを言った。

「さくらちゃん、お礼がしたいから今度ふたりで出かけない?」

「――え」

 出かけるって……えっ! わ、私と村瀬さんで!?
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