極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 それでも自分の都合のいい方向に考えてしまいそうになり、慌てて首を横に振った。

 目的の階に着くと私の手を引き、彼は地下駐車場を突き進んでいく。

 そして自分の車の助手席に私を乗せると、すぐに村瀬さんも運転席に乗り込み、車を走らせていく。
 地下駐車場から一般道に出ると同時に彼が口を開いた。

「一晩寝たらよくなったのかもしれないけど、だからってこんな時間まで残業することはないだろ? そんなに急ぎの仕事があったのか?」

「いいえ、そういうわけでは……。ただ、集中してやっていたらこの時間になっていて……」

 いつになく厳しい口調で言う村瀬さんに、しどろもどろになりながらも説明する。

 だけど彼が心配してくれているのが言葉や態度から伝わってきて、胸がいっぱいになる。

 すると村瀬さんは深いため息を零した。

「本当に困る。……昨夜のさくらの声がいつもと違ったのが気になったし、風邪を引いたって言うだろ? ひとり暮らしなのに大丈夫か心配で……。朝だけ出社してすぐに日本行きの便に飛び乗ったよ。今夜の最終便で戻らないといけないのに、ひと目だけでも顔が見たくてたまらなかった」
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