極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 嘘――。それじゃただ私を心配して来てくれたの? それも今夜またすぐ戻らないといけないのに?

 信じられなくてジッと運転する村瀬さんを見つめていると、私の視線に気づいた彼はハザートランプを点灯させて、路肩に車を停めた。そして真っ直ぐに私を見つめる。

「連絡を取り合っていれば、三ヶ月くらい耐えられると思っていた。でも実際に離れると、毎日会いたくてたまらなかったよ。……よかった、元気そうで。顔色もいいし安心したよ」

 彼の大きくて温かな手が頬に触れ、そっと撫でられていく。

「やっぱり顔を見て話しをしないとだめだな。電話やメッセージじゃ足りない」

 優しく微笑んだ顔はすごく素敵で、私が大好きな笑顔――。

 私……本当にどうしようもないほど村瀬さんが好きでたまらない。ううん、こんなに優しくて素敵な人を好きにならないほうがおかしい。

 仕事が忙しく、数時間の滞在時間しかないのにこうして会いに来てくれるなんて……。

「夕食まだだよな? どこか食べに行こうか。それとも食欲ないか?」

 どこまでも優しい彼に、熱い涙が零れ落ちた。

「え……さくら? どうした? どこか痛むのか?」

 突然泣き出した私に、村瀬さんは慌て出す。
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