極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「大丈夫か?」

 スーツの裾で涙を拭ってくれる彼は、すごく心配そう。

 昨日は早乙女さんに言われて不安になってしまった。きっと早乙女さんのほうが村瀬さんのことを知っていると思う。

 立場だって彼女のほうが近くて、わかり合えることも多いはず。

 それでも私がそばにいてもいいよね? 私が知っている村瀬さんを信じたい。優しくて誠実で、そんな彼に愛されていると。この先、なにがあっても決して手を離さずにいてくれると……。

 大丈夫、村瀬さんならきっと子供ができたと話したら喜んでくれるはず。

 その思いが強くなり彼を見つめた。

「さくら……?」

 村瀬さんは、不思議そうに私の名前を呼ぶ。

 大丈夫と自分に言い聞かせても、やはりいざ打ち明けるとなると緊張する。

 高鳴る心臓を必死に鎮めながら口を開いた。

「あの……ごめんなさい。違うんです、風邪なんて引いていないんです。村瀬さんに話したらどう思うか不安になってしまって……」

「えっ?」

 驚く村瀬さんを見たら言葉に詰まり、ゴクリと生唾を飲み込む。そして小さく深呼吸をして打ち明けた。

「生理がきていないことに気づいて病院に行ったら、妊娠していました。……7週目に入っていると」

「妊娠……? さくらが?」

 大きく目を見開く彼に、心が揺れる。
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