極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 村瀬さんは、どれだけ私のことを好きにさせるつもりつもりだろうか。

 言葉にならなくて「そんなことありません」と言うように、首を左右に振った。

「父さんたちにさくらのことを話したよ。……父さんも母さんも、弟夫婦も喜んでいた。やっと結婚したい女性と出会えてよかったなって。さくらと会えるのを楽しみにしていたよ」

「本当ですか? ……よかったです」

 ご両親にそう言ってもらえて、本当によかった。

「きっと妊娠のことも喜ぶと思う。弟夫婦に早く孫を見せろってせがんでいたから。……今夜戻るが、予定を早めて戻ってくるよ。父さんたちにも一度帰国してもらおう。さくらのご両親にも報告に行かないとな。あ、ベビーグッズも揃えないといけないよな」

 楽しそうにこれからの話をする村瀬さんだけれど、ベビーグッズを揃えるのはちょっと早いじゃないだろうか。

 思わず笑ってしまうと、村瀬さんは「なにが可笑しいんだ?」なんて言う。

「いいえ、ちょっとベビーグッズは早いんじゃないかなって思って」

「そうか? 必要な物だろ?」

「そうですけど……」

 どちらからともなく顔を見合わせると、笑ってしまう。そしてひとしきり笑った後、村瀬さんは真っ直ぐに私を見つめた。

「ベビーグッズを買いに行く前に夫婦になろう。心配だから早く一緒に暮らしたい」

「村瀬さん……」

「あと、指輪も買いに行かないとな」

 私の左手薬指を撫でながら言われ、胸がいっぱいになる。すると村瀬さんはそっと私のお腹を撫でた。

「さくらと生まれてくる子供は、なにがあっても俺が守るから。……いや、さくら。ふたりで生まれてくる子供を守って、大切に育てていこう」

「……はい!」

 守っていきたい、自分の中に宿った大切な命を愛しい彼とともに。

 それから私が住むアパートに向かい、村瀬さんのフライト時間までゆっくりと過ごした。

 一緒に夕食を作って食べて、それからはピタリと寄り添い、生まれてくる子供の話をしながら――。
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