極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「どうしたんだ? さくら」

 どこか痛むのだろうか。

 だけどすぐに信号は青に変わってしまい、慌てて近くのコンビニの駐車場に車を停めた。

 シートベルトを外して彼女の様子を窺うと、涙を拭いながら「すみません」と言う。

「なんか最近、すごく涙脆くて……。両親やおじいちゃん、おばあちゃんにも喜んでもらえましたし、村瀬さんのご両親にもそんな風に思ってもらえていることが嬉しくて……。幸せです、私」

 さくらが笑顔で言うものだから、俺までつられて頬が緩む。

「そうか。……そういう理由で泣いたならよかった」

 そっと彼女の頭を優しく撫でていく。

 さくらが幸せだと、俺まで幸せな気持ちになる。この先もずっと彼女には、俺の隣で幸せだと感じてほしい。

「落ち着いたら帰ろうか。帰ってゆっくり今後のことを話そう」

「……はい」

 それから彼女が住むアパートに向かい、この日は泊まって久しぶりにふたりの時間を過ごした。



 次の日。久しぶりにさくらの家から出社すると、いつものように山浦さんが出迎えてくれた。

「おはようございます、副社長。長期間の出張、お疲れ様でした」
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