極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 帰国前に山浦さんには、さくらの妊娠と彼女との結婚時期を早めたいことを伝えた。彼にはなにかと動いてもらうことになるだろうから。

「猪狩さんはお仕事のほうはどうされるんですか?」

「続けたいという彼女の意見を尊重しました。……本音を言えば心配なので、早めに休んでほしいんですけどね」

 だけど昨夜さくらは、仕事が好きで、今の職場でこれからもずっと働きたいと言っていた。

「相手が俺ということは伏せ、早めに妊娠していることを人事部に報告し、臨時の管理栄養士を早急に見つけてもらうつもりです。さくらには心苦しい思いをさせてしまいますが、正式に結婚を発表するまでは、どうにか誤魔化してもらいます」

 入社当時から世話になっていると言っていたから、すべて打ち明けたいだろうけれど、相手が俺であるが故に嫌な思いをさせてしまう可能性もある。

 せめて彼女が安定期に入るまでは、精神的苦痛など与えたくない。

「社員食堂の従業員は、大変噂話がお好きなようなので、猪狩さんのお相手が副社長だと知ったら、あっという間に広まってしまいそうですしね」

 クスリと笑いながら言う山浦さん。
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