極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「そのためにも、不安要素は排除しなくてはいけませんね」

 そう言うと山浦さんは、神妙な面持ちになる。

「ご結婚、ご懐妊のお話と一緒に例の件をうかがった時は、耳を疑いましたが……。副社長に言われて調べたところ、残念な結果になりそうです」

「……そうか」

 手にしていたカップをテーブルに置き、椅子の背もたれに体重を預けた。

「まだ確たる証拠を掴んではおりませんが、疑惑が的中していましたら、副社長に早乙女との縁談を勧めてきた背景にも納得がいきます」

「やはりそう思いますよね。……俺も同意見です」

 俺がシンガポールに向かったのは、向こうでの進行状況の把握をし、現地スタッフとのコミュニケーションを目的にしたものではない。社長である父さんから呼ばれたからだ。

 さくらのことがあったから俺にとっても好都合で、急遽日本を発ったわけだが……。父さんから聞かされた話は、すぐには信じることができるものではなかった。

 勝次叔父さんが、社長である父さんを通さずに、勝手に他社と新商品の開発に着手しているというのだ。開発にかかる資金は予算委員会を通さずに流しているとも。

 その他社というのが、彩芽の父親が経営する会社だ。
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