極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「なんと言われようと、俺はさくらと結婚します。……どうか勝次叔父さんもさくら自身を見て知ってください。そうすればきっと彼女との結婚を理解してくれると信じています」

 小さく一礼し、専務室を後にした。だけど廊下に出たところで足が止まってしまう。そして見てしまうのは、さくらに関する報告書。

 これも勝次叔父さんが、悪くまとめるよう指示したのだろうか。俺にさくらを諦めさせるために。

 昔から慕っていた相手だからこそ複雑な思いに悩まされる。いつの間にか手に力が入っていて、持っていた書類や写真を強く握りしめていた。

 疑惑はデマで、勝次叔父さんにも結婚を祝ってもらいたかったが、その願いは叶いそうにないな。

 ため息ひとつ零し、自室に戻ろうとした時。

「待って、誠司君!」

 追いかけてきたのは彩芽だった。そんな彼女にすぐに注意をした。

「こら、ここは会社だぞ。言っただろ? 会社では役職名で呼べって」

 そんな言葉をかけても、彼女はなぜか切羽詰った顔をしている。

「どうかしたのか?」

 いつもと様子が違うのが気になって尋ねると、彩芽は今にも泣きそうな顔で訴えてきた。
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