極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「サラダの追加お願いします。あと麺も茹で始めてください」

 フロアから指示を出して、出来上がった料理を補充していく。

 ちょうど客入りのピーク時間を迎えた頃、汚れていたテーブルを拭いていると、厨房のほうから弥生さんが必死に私を手招きした。

 慌てた様子に、焦りを覚える。もしかして緊急事態だろうか。

 足早に向かうと、弥生さんは近寄ってきた私の腕を掴んで引き寄せた。

「さくらちゃん、入口を見て」

「えっ?」

 言われるがまま入口を見ると、そこには腕を組んでこちらに鋭い視線を向けている早乙女さんの姿があった。

「ひとりで来たようだけど……どうする? あの秘書課の山浦さんだっけ? なにかあったら言ってくれって言っていたし、連絡しようか?」

「いいえ、そんな……。もう同じようなことはされないと思います。それに、ただ食事に来ただけかもしれませんし」

 とは言いながら、心の中はざわざわと騒がしい。

 他の社員と同じように、昼食を取りにきただけだよね? そう、信じたい。

「仕事に戻りましょう」

「……さくらちゃんがそう言うなら。でも! なにか怪しい動きをしたらすぐに私が連絡するからね!」

 念を押して言うと、弥生さんは調理に取りかかった。私もフロアに戻る途中、チラッと彼女を見ると再び目が合い、慌てて逸らした。
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