極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています

「今日はどうしよう。……たまには日替わり以外のものも食べてみようかな」

　その言葉にハッとなる。今日は村瀬さん来ないと思っていたから、日替わりを取り置きしていなかったことに。

「すみません、今日は早くに売れちゃって……」

　さすがにいつも残っていたのは、私が村瀬さんのために取り置きしていて、来なかったら買い取っていたんですとは言えそうにない。

「いやいや、売り切れていて当たり前だよ。うまいもの。いつも残っていたのが奇跡だった」

　本当にすみません。その奇跡は私が作り出していたものです……。なんて心の中で呟きながら、苦笑いを浮かべてしまう。

「そろそろ閉店時間だよね？」

「あ、はい。そうですね」

　店内の壁に掛けられている時計に目を向けた村瀬さん。つられるように私も時間を確認すると、あと三分で十九時になろうとしていた。

　常連さんはほとんど来たし、今日も村瀬さんが最後のお客様かもしれない。

　そんなことを考えていると、村瀬さんは耳を疑うことを言った。

「じゃあ残っているもの、全部もらおうかな」

「全部って……えっ!?　全部ですか!?」